その事件も語るとしよう。
彼は教え方が丁寧で子どもから人気があり、裏がないので嫌われることなどなかった、だが、"裏切り者"ただそれだけで憎む人間も少なからずいたのだ。
"裏切り者"のあいつがどうして自分より功績を残している…そんな妬みや嫉みが彼を失脚へと追いやることになる。
その中心となった人物は…諸葛格殿…らしい。
正確には私にもわからないが…塾に来た諸葛格殿の短所を父の諸葛キン殿に告げ口したかららしい…
孫伯がそんなことするとも思えないのだが…。
孫伯が失脚して間もなく夷稜の戦が起こった、そのため私は建業にいなかったためその間はわからない…
しかし、それが孫伯の命を奪ってしまうことになった…。
司馬懿殿は孫伯の噂をどこかで嗅ぎ付けたらしく建業に暗殺部隊を送り込んでいたのである。
孫伯は子どもの命を守り戦死…語り継がれることのない者になってしまった。

だが私は覚えていよう、彼は生きた。生き抜いたのだ。


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