「お主風貌が似て…るな!」
「確に…、まさに……殿そっくりでござ…ます」
「よい…貌…な」
「ま…に、………」
「えっ?……」
 またあの夢…、それよりも私はどこにいるのだ?なにか忘れかけていた匂いがする…、昔からいつも感じていた匂いのような気がする。
「ニィ…、……てよ、…ィ!」
「え…?」

 薄っすら見える顔は前に会ったことのあるような顔だ…
「ニィ!起きてよニィ!!!」
「陳恭…?」
 紛れもなく我が弟陳恭だった。
「ようやく目を覚ましたんだね!よかった」
 私はよく状況がわからなかった。陳恭はひとつずつ説明してくれた。
 あの後、私がやられたの見た仲間は一目散に逃げたらしい。私は一人倒れていたが、張飛は名乗りあげた私を気に入ったらしく、近くの知り合いの家に預け、そこにたまたま来ていた陳恭が気づき今にいたるらしい。前に戦った李通も一緒で話をしたがっていると、
「その李通はどこにいるんだ???」
「そろそろ帰ってくるんじゃないかな」
 すると戸を開ける音が聞こえた、見た目は威厳があり、生傷もあるが大柄というほどの体格でもない。
「ようやく意識が戻ったか」
 李通の声はキレイであり、それでいて周りに威圧を与えるような声だ
「いい声だ、私は陳到。女南近くの生まれだ」
「それはどうも、我が名は李通、今は万億と名のっている」
「万億?」
 私はなぜ名を変えているのか聞いてみた、
「私はお前と戦った後のことをよく覚えていないんだ。陳恭が近くに居たんだが、その時主君の嫡男を殺したらしいんだ。血迷った私はそのまま主君まで手にかけて、今じゃお尋ね者だ。」
李通はその後も淡々と話をしてくれた。弟陳恭も笑いながら相槌をしてくれる、私はようやく元々居た場所に戻ってきたような気がした。だが、私の未来がわからない…。また陳恭と離ればなれになってしまうのか?この先私は誰かに殺されてしまうのか?私はこの先どようにこの世を渡り歩くのだろう…

〜続〜


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