一
「お主風貌が似て…るな!」
「確に…、まさに……殿そっくりでござ…ます」
「よい…貌…な」
「ま…に、………」
「えっ?……」
「起きなよニィ!」
山に面した一戸の家にその人は、生まれ生きてきた。父と母は既にこの世にはなく、弟と二人で住んでいた。起きようとすると、すぐ近くには雑煮が置いてあった。いい匂いはしないが、これが毎日の食事。毎日外へ狩りに出ては、獲物を仕留め都で売って金した。自分にあるのは"力"だけ…、弟は毎日知り合いの先生に
学問と兵法を習っているらしい。俺は毎日習ってきた弟の話しを聞き、頷くたびに関心した。
元々私の父親は名ある武将で、李性を名乗っていたのだが追ってから逃れるために今の性を名乗っている。私の周りには性は違うが、多くの親戚がいるらしい。親戚にあたる周家を頼った者や、今だに李性を名乗る者や多くが知らないままらしい。それは私の先祖の女好きが悪いのか、転戦するたびに種をまいてきたとか。だから私にもなにもわからない。
「食べないのかよニィ?」
「食べるよ」
いつもと変わらぬ味。昔の先祖の地位を考えれば…、と毎日この雑煮を食べるために思う。私も徳ある人に使え功を立てたいと。
「今日も講義があるのか?」
弟は支度を整え
「あるよ!また狩りに行くんだろ?気をつけて」
「わかっているよ」
弟は"行ってきます"と言って出ていった、それが最後の交した言葉だった…。
弟はそれから帰ってこなかった。いくら誰に聞いてもわからない、「賊に襲われた 」「皆で旅に出た」意味がわからぬ狂言に聞こてきて、私自身の中で弟は死んだ
。そう自分自身に言い聞かせてきた…。