地下へ続く石階段と土の壁は冷たく、湿っていた。

蝋燭一本の灯りをたよりに、父と私は地下の室へ向かった。

「殺した私でさえ、たまに本当に生きているのではないかと不安になり脈を取ったりしたものだ」

そこには、生前と同じ美しさの荀ケ様がいた。まさか、生きていれば父より年上、それこそ白髪だらけで皺まみれのはずなのに。

「は・・・・ハハハ・・・・お父様は、演義がお上手だ・・・」

「なにがじゃ・・・・・それより今日はまだ菓子も食べてない」

「今度こそ、本当に呆けたかと思いましたが、また演義でしたか!もう騙されません!」

「菓子は・・・菓子はまだか。茶と一緒に食べたいのだが。師よ」

「兄さんと間違ったフリをしてボケ老人の演義ですか?荀令君の話はわかりました。信じましょう。このご遺体を目にしては、嘘だと片付ける方が難しい。しかし、あなたはどうして、そういつもまわりくどいのです!今日だって、荀令君の話をせずに、ご遺体も見せずにハッキリ『お前が砒素で殺そうとしているのはわかっている』って仰ればいいではありませんか!そうですよ!あなたは、私の荀令君でした。
目標であり、尊敬の対象でした!だから、そんなあなたが耄碌して死ぬのを見るのは耐えられなかった・・・・」


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