「お前は俺を慰めて呉れているのだなぁ」
それには流石に棗祗も苦笑いし、
「併し矢張り、三城残した功績を評価されるべきです。実に賢明でした」
と応えた。そして不意に質問をする。
「それは良いとして将軍。将軍は名将の条件とは、一体何だと考えますか?」
「名将の、条件か?」
「はい」
唐突な質問に
「うーむ」
と考えた後、夏侯惇は、
「矢張り勝ち続ける事だろうよ」
と素直に答えた。そして己の言葉に頷き、
「永遠に勝ち続ける事の出来る者が名将であろう」
と、もう一度こう謂い頷いた。
「しかし、百戦を百勝できる者がいますでしょうか?」
棗祗はそれに疑問を挟む。
「居らぬかなぁ?」
「恐らくは居りません」
首を傾げた夏侯惇に厳しい調子で棗祗は言う。
「うむ。そうだよなぁ。矢張り居らぬよなぁ」
それで夏侯惇も居らぬと結論付けた。