それで夏侯惇も話を戻す。
「と、いう事は、名将の条件とは、勝つ為の準備を抜かり無く行える事、という事で良いだろうか?」
これに対して、棗祗は澄まして
「いえ。これは勝ちの可能性を上げたというだけで、これを満たせば必ず勝てるという類いのでも無く、精々が能れた戦略家というところ。迚も名将の条件とするには足りませぬ。事実、苦しい状況下から戦況を何度も逆転させてきた稀代の戦術家の言ですから、彼の存在自体が、この条件を満たす者が名将で無い事を証明しています」
と応えた。
「なんだ。又随分と意地悪じゃないか。では名将の条件とは、一体何だ?」
夏侯惇は口を尖らして質問する。
「実は私、同様の質問を戯参軍にも伺った事があるのです」
棗祗は笑って答えた。
「おお、志才の言う事なら間違いなかろう。で、奴は何と?」