夏侯惇は仮司馬の満寵を呼びつける。
「夏侯蘭、予備から俺の直営として、騎兵一個中隊を編成し、待機させろ」
夏侯蘭は驚いた顔をしたが、唯々と直ぐ様頷き、急ぎ準備に掛かる。
「満寵、お前に一個機動大隊三百名の指揮を預ける。後方にて予備として待機し、俺が動いたら続け」
「危険ですが宜しいのですか?」
「宜しい!」
満寵は全てを理解した目で頷く。「敵の戦太鼓の本当の意味をこいつは解っているのだな」と、夏侯惇は頼もしく思った。
戦況の報告を受けながら夏侯惇は西南の敵を又も見詰める。
「どう診る、韓浩」
「先ずはこちらが有利、とも言えますな。しかし」
韓浩が己と同じ事を考えていたのを察し、夏侯惇は頷く。
「戦力を維持したいのは敵も同じか。こちらが誘いには乗らなかったからな」
「はい。敵も特別の策が無ければ、攻撃を控えるのでは、と予想します」
その特別の策を警戒する夏侯惇である。しかし
「敵もこちらの意図は挫いた。じわりと下がり堅く護れば、深逐いはしてくまい」
と言い、韓浩以下司令部の者を安心させる。