「はい。路招、李整の収容後、後退を始めましょう」

現在二将の大隊は、楽進を追って来た李黒、趙庶の軍をそれぞれ左右から攻撃を始めている。ここに至って楽進も後退から転じ、追撃する敵に突撃を開始した。

「否。三将には先ず、左前衛として西南の敵に備える様伝えよ。敵の突撃あれば、敵側面より突撃すべしと。三将の準備が出来たら、王朗は西側に突出し、一旦敵を誘う様に」

韓浩は頷き伝令を飛ばす。それが終わる頃、夏侯惇は又韓浩を呼んだ。

「睨み合っただけで終われば、双方共士気に関わる。敵は必ずや一度は突撃してくる筈だ」

韓浩は頷く。

「しかし敵は用兵達者。何が起こるかはわからん。突撃への備えのみならず、臨機応変の構えを採らねばならん」

「了解しております」

「うむ。矢張り本隊を任せられえるのは、上手のお前しかいないな」

突然の切り出しに韓浩が戸惑うと、

「本隊指揮の全権をお前に委ねる」

と、夏侯惇ははっきりと謂った。韓浩が驚く顔で夏侯惇を見詰める。


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