「名は?」

夏侯惇は軍候に問う。

「姓を楼、名を異と申します」

「楼異か。覚えておこう」

軍候は問いに答え、その名を夏侯惇は深く記憶した。何れは司馬にでも推挙してやろうと考える。これ程練達した運用の名人は、そう多くは無い。

敵の第一射を凌ぎ、そして今、熟練の軍候も未だ健在である。己も倒れていない。これは何とか成ったかな、と夏侯惇は考えたが、突撃に備え気を引き締め直した。


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