一度撃って了った騎馬弩弓兵は弱い。曹性指揮の騎馬弩弓兵は後続の満寵に叩かれ、脆く崩れ去った。夏侯惇の突撃を受け止めた後方の騎兵であったが、それを見て後退をする。陣後方の危機が去った事を察知した韓浩は、この時一気に予備を投入し、表側で攻勢に出た。この攻勢により後方撹乱の失敗を悟った侯成も矢張りじわりと退いた。こうして両軍は特別の被害を出さずに分かれたのである。韓浩も負傷した為代行代理の満寵は、整備中の第一次陣地まで退き、戯志才考案の防禦陣形「一門禁鎖陣」を敷き堅く守り、曹操の到着を待った。

敵を退けた際夏侯惇は、

「この睛は父母の精血。何とも棄て難いなぁ。いっその事啖らって了おうか?」

楼異の前で堪えて笑い、その後痛みと貧血の為に気絶する。これが後に誤まって、

「正中夏侯惇左目、惇大叫一声。急用手拔箭、不想連眼珠拔出、乃大呼曰、父精母血、不可棄也。遂納於口内啖之」

と記録された。


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