「父上は何のために戦うのですか?」

 とある話の折に、私は父にこう尋ねてみたことがある。それに対し父は

「何のためだと思う?」

と穏やかな微笑を湛えながら聞き返してきた。

「……天下を再び一つにせんがためですか?」

「確かにそれもある」

「民衆の安寧を取り戻すためですか?」

「それもある」

「他には……」

「思いつくか?」

「……思いつきません」

私は頭を振って父に答えを求めた。父は微笑を浮かべつつ

「確かに、お前の言うようなことのためにも戦っている・・・・だが、それは一番の理由ではない」

「では、何が一番なのですか?」

「それはな……」

 そう言いつつ、私のところに歩み寄り

「お前たちを守る……それが一番の理由だよ」

と言って、私の肩に手を置いた。


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