――建安二十四年八月某日

「父上が……死んだ?」

 私は魏王からの使者にそう聞き返した。
「敵将関羽によって首を刎ねられ……」

 使者は沈痛な面持ちで言葉を発す。

「父上が……死んだ……」

 その言葉が頭の中で何度も繰り返えされる。私はその場にへたりこむ。

「死んだ……父上が……」

 そんなことあるわけがない……父上は最高の英雄ではないか。

「嘘だと言ってくれ……」

 しかし使者は首を横に振るばかりである。

「嫌だ……」

 嫌だ……嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

「嫌だァァァァァァッ!!」

 そう叫んだ次の瞬間、私は拳を何度も床に打ちつけた。そのようなことをしても、何も解決するわけではないというのに。

「ふざけるな!ふざけるな!ふざけるなぁぁぁぁ!」


>>次項