「……かつて、我が父は荊州に曹子孝将軍の救援に向かった……」
(お話、長いなぁ……)
「……非道にも関羽は我が父をためらいも無く処刑した!……」
(何言ってるかわかんないや……)
「……よって、お前たちの血をもって父の供養とさせてもらう!」
高いところでしゃべっていたおじさんがそう言ったとたん、みんなが悲鳴を上げた。
「?」
(どうしたんだろう?みんな、そんな声をあげて?)
「父上、いったいどうしたんです?」
ぼくは隣にずっといた父上に尋ねた。だけど、父上は何も答えてはくれなかった。そのかわり
「殺される……殺される!……」
とひたすら震えていた。
(『殺される』?)
前のほうにいた人たちが順番に引っぱり出されていく。
(それって……『死ぬ』ってこと?)
男の人や女の人の叫び声や泣き声が、絶え間なく耳に入ってくる。
(そんなの……そんなのいやだ!)
辺りが血のにおいでいっぱいになっていく。
(そうだ!あの立派なよろいを着たおじさんにたのめば……)
ついにぼくの番が回ってくる。
「おじさぁぁぁぁぁん!」
ぼくは力いっぱい叫んだ。高い所にいる、あのおじさんに聞こえるように思いっきり、力いっぱい。
「助けてよ!ぼく、死ぬのはいやだ!ぼくが死ぬのも!父上や母上が死ぬのも!」
「……」
だけどおじさんは何も答えてくれなかった。