四
ホウ会・血染めの手で掴んだものは
――景元五年某日、夕方
「き、気は済んだか?」
処刑場を見下ろす私に、後ろからケ将軍が声をかけてきた。
「……」
何も答える気にはなれなかった。
「お、お前は四十五年という長い年月を経て、よ、ようやく復讐を果たした」
「……」
「だ、だが復讐を果たして、そ、その手に何が残った?」
「……」
「な、何も答えたくないか……」
「……」
「そ、そうか……で、では先に降りている。お、お前も気が済んだら下りてこい。こ、ここを早く片付けねばならんのでな」
そう言ってケ将軍は櫓から降りていった。
「クッ……」
拳を握り締める。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
叫ばずにはいられなかった。
「何故だ!?何故こうも不愉快な気分になるんだ!?四十五年という年月を経て、ついに復讐を果たしたというのに!」
叫びながら、櫓の床を何度も殴りつける。
(死ぬのはいやだ!)
昼間の親子の声が未だに耳にこびり付いている。