ホウ会・血染めの手で掴んだものは


――景元五年某日、夕方

「き、気は済んだか?」

 処刑場を見下ろす私に、後ろからケ将軍が声をかけてきた。

「……」

 何も答える気にはなれなかった。

「お、お前は四十五年という長い年月を経て、よ、ようやく復讐を果たした」

「……」

「だ、だが復讐を果たして、そ、その手に何が残った?」

「……」

「な、何も答えたくないか……」

「……」

「そ、そうか……で、では先に降りている。お、お前も気が済んだら下りてこい。こ、ここを早く片付けねばならんのでな」

 そう言ってケ将軍は櫓から降りていった。

「クッ……」

 拳を握り締める。

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 叫ばずにはいられなかった。

「何故だ!?何故こうも不愉快な気分になるんだ!?四十五年という年月を経て、ついに復讐を果たしたというのに!」

 叫びながら、櫓の床を何度も殴りつける。

(死ぬのはいやだ!)

 昼間の親子の声が未だに耳にこびり付いている。


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