書面には、次のようなことが記されてあった。
父・カク順の心奥を知らず、子息として、わたくしはあまりに不明でありました。
もはや、父の悔いを清める事も叶いませんが、少しでもその親心に添うために、あなた様の軍略一切を具備し、これをもって、いずれあなた様に挑戦する覚悟です。
そのときは、どうか互いに過去を忘れ、全力で決戦する事を望むばかりです。
孔明は、すぐにキン詳はじめ近侍の者たちに、カク昭の行方を捜させた。
カク昭が他国に仕え、敵となって現れるのを怖れたためではなかった。
この先、カク昭無しに夜を過ごす寂しさに、とても耐えられるものではない、その煩悩に捕らわれてのことだった。
しかし、カク昭が、再び現れるのは、彼が陳倉城の城将として、孔明の北伐を阻まんとするそのときまで、時を置くことになるのだった。
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