『何て男だ。この男が河内の赤鬼長生…必ず次は…必ず…』

 もんどりうって遥か向こうへと転がり、大の字のまま気を失った少年を確認すると、長生は自分の右手を眺めていた。

 「あの子もなかなかの者ですね。」

 公明はいつの間にか目を開き、立ち上がっていた。彼も同じ歳の文遠とは比べ物にならない程、大きかった。

 「いや…ここがもし戦場で、あの木刀がもし真剣であったならば、私は敗れていたであろう。この男…公明、ここに奴を放っておくのも危険だし、この男をとりあえず保護しようと思う。力を貸してくれぬか?」

 赤鬼の正体は、姓を関、名を羽、字を長生。幼い頃から親はおらず、自給自足の生活を続けている、熱く誰よりも強い少年。死して尚、神と崇められるこの男には呪われた人生が待っていた。


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