酒屋に不釣合いの三人が座っていたのは右隅の席だった。

 「どうした?文遠、顔色が悪いな。」

 長生は目の前に座る文遠がここに来て、何も口にせず、ただ深刻な顔で俯いている事に早くから気が付いていたが、今初めて確認をしてみた。

 あれから三ヶ月余り経った。一人暮らしの長生の家にそのまま居座った文遠は、当初長生の毎日を観察し、どうすれば彼に勝てるかを模索しようとしていた。しかし、時を重ねるにつれ、彼の人となりに惹かれていき、ついには彼に剣術を指南してもらうようにもなった。同じく毎日のように長生の家に顔を出す公明から文学も教わり始めていた。三人は随分昔から知り合いだったかのように、仲の良い友となり、お互い切磋琢磨した。先日は長生の留守中に、彼に果し合いを挑んできた大人を無断で返り討ちにしたのも文遠だった。


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