「まぁ奴らの四〜五人が相手なら、文遠が不覚を取る事もあるまい。それよりも…」
長生はそう言ってまた一口呑み、話を続けた。
「それよりも…気にならないか?この店のどこかから凄まじい殺気が、俺達を見続けているぞ。」
公明は長生の言葉を受けて、店内を見渡した。自分達以外の客は三組。一人で店の真ん中で飲んでいる中年男性は泥酔状態で、何やら独り言で愚痴をこぼしていた。自分達と向かいの左隅には中年の男女が先程から何やら小声で話している。彼らの他には、ちょうど支払いをしていた初老の老人と孫らしき子供が店から出ようとしていたくらいだ。
「あの男女ですか?そう怪しいとも思えませんが…」
その時、店を出ようとしていた老人のところから子供がくるりと返し、こちらに歩み寄ってきた。
「あんたが赤鬼長生だろ?強いんだって?近いうちに手合わせしてくれないか?」