少年は自分と同じか?少し年少にも見える。公明は彼の言葉に驚きながらも、あどけない表情からかもし出された妖しい微笑みに背筋に寒気さえ覚えた。長生は普段自分より年下からの挑戦は受け付けない。今回もそうなるだろうと思っていた。しかしその期待はあっさりと打ち消された。

 「今すぐでも良いぞ。」

 長生はその場ですぐに立ち上がり、少年の言葉に敏感に反応した。睨み合う二人は背丈が倍近く違っていたため、子供と大人が睨み合っているようにしか見えなかったが、少年は余裕の笑みを浮かべ、逆に長生の方は臨戦態勢に入らんとする勢いで、怒りに肩を震わせていた。

 「これこれ…これは失礼しました。どうもうちの坊主は礼儀知らずでして…。どうかここは年寄りに免じて穏便に…。」

 店を後にしようとした老人が、慌てた様子で二人の間に割って入った。それでも二人が目を逸らす事はなかったが、老人が強引に少年を店の外に連れ出して行った。


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