「忘れんなよ!約束だからな!。」

 去り際にも少年は大声でそう怒鳴っていた。

 しばらく立ちすくみ、少年の出て行った外を睨んだままの長生であったが、公明の心配する声に促されて、ようやく我に帰り、急に帰ると言い始めた。

 「長生殿、あなたらしくないですね。なぜあんなに熱くなられたのですか?」

 公明は本当に不思議に思っていたことを素直に聞いた。事実、これまで幾度となくあのように勝負を挑まれたが、先程のように彼が我を忘れて、挑発に乗る姿など見た事がなかった。

 「俺にも分からん。ただ…本能が…俺の本能が、警戒しろと言うんだ。」

 明らかに動揺していた長生は、何か思いつめた様に、店を後にした。


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