長生の元に悪い知らせが届いたのは、その日の夜だった。その時、彼は公明と共に夕食の準備をしていた。もちろんなかなか帰って来なかった文遠の分まで、二人は用意しようとしていた。そんな時、陳喜の遣いの者が現れ、文遠を人質にしたという事を告げた。狙いは長生の侘びだった。その場で使いの彼を素手で殴り倒し、長生は手ぶらのまま、彼の屋敷へ急いだ。

 川沿いの広い道を抜け、橋を渡るとそこには一際大きな屋敷があった。元々三代前に三公を排出している程の名家だった陳家は今の喜の代になって、役人から商いの道に走った。しかし、地元の名声を鼻にかけ、悪どい商売を続けた彼を相手にする者は、年を追う毎に減り、行き詰った陳喜はついに黒山の賊と手を組み、彼らに武器を密輸する事で、また繁栄を取り戻し始めた。

 「門を開けよ。関長生である。」

 大きな正門の前まで来ると、いかにも賊っぽい男が出窓から長生の姿を確認し、門は開け放たれた。


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