人気のない門から、しばらく歩くと、開かれた中庭の隅に小さな小屋の様なものがあり、そこに先程の見張りの男が、ニヤニヤしながら立っていた。どうやらあそこに文遠が軟禁されている様だ。

 見張りの男を一瞥して、長生は小屋の中に足を踏み入れた。蝋燭が小屋の四隅と節々にいくつか立て掛けられていたが、どうやら十人前後の男達がいるらしい。どれも見た事のない顔で、彼らがこの町の者ではない事がすぐに分かった。入り口から一番遠い所、その柱に文遠は固く縛られていた。顔は何箇所か腫れ上がり、かなり暴力を受けたのが分かる。

 「文遠…大丈夫か?俺のせいで…すまなかった。」

 長生は周りの男達を睨みながら、動けない文遠に向かって、そう言った。文遠も何かを返したが、傷だらけの口の中が邪魔をして、言葉にならなかった。少しずつ前進する長生に奥からの声が待ったを掛けたのは、其の時だった。

 「それ以上はこちらに来るなよ。図に乗りすぎたお前にようやく思いを晴らす時が来たみたいだな。」


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