蓮池は城外の一里先にあるこの地方一番の大きな池。河と言っても誰も疑わない大きさであった。周りは大人の腰よりも高そうな葦が生え、激しい雨と風が、いつもなら風情のあるこの情景を、何やら怪しげに映していた。

 少年は赤鬼を待っていた。

 自分達が闘うべき戦場を造るために自分よりも背の高い周りの葦を広い範囲で刈り取り、遠目から見ると、まるでその場所だけ丸く別の空間が出来ているようでもあった。

 長生は少し離れた小高い丘の上で、その少年の姿を確認するが、特に急ぐ事もなく、自分を落ち着かせるかのように、足取りを変えずに歩き続けていた。なぜここまで自分がこの少年を意識するのか…それはまだ分からなかった。彼と闘うことでその答えがきっと見つかるだろうと思っていた。

 「待たせた様だな。」

 「あぁ待ったよ。待ちきれなくて昨日の夜はここに止まったくらいだ。」

 少年はそう言いながら、自分より二倍ほど大きな長生に向かって、不気味に笑っていた。


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