「化物が…。」

 長生はそう吐き捨てると、今度は自分から走り寄った。やらなければやられる…その想いが長生を攻撃へと仕向けさせた。

 長生は木刀の八分目くらいを右手で握り、横殴りで少年の頭を狙った。少年はそれを屈んで交わしたが、すぐに今度は長生の左の足が廻し蹴りとなって屈んだ彼の頭に向かい、飛んできた。しかし、長生は寒気を感じ彼の頭の直前で足を止め、後方へ大きく飛び退いた。

 「おのれ…この俺を誘ったのか!」

 屈んだ少年の頭の横には、彼が手にしていた真剣が不気味に顔を覗かせていた。長生は咄嗟にこれに気が付き、足を止めたのだと、この時初めて戦局を見守っていた二人は気が付いた。

 「剣武融合か…咄嗟に危険を悟る判断力、速さ、力…どれも一級品だね。恐くてこれ以上なく楽しいよ。」

 少年は幸せそうに笑っていた。この状況で笑えるその神経は誰にも理解できなかったが、確かに長生もこの時間に浸っていた。我を忘れて、闘いを楽しんでいた。そして彼は気が付いた。
『真剣でこいつと戦いたい…』


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