少年の顔から笑いが消え、ただ黙って長生の方を眺めていた。まるで理解できない…とでも言わんばかりに、少年は睨んでいた。その内、罵声と共に誰かが投げた石が長生の頭に当った。真赤な血は、さらに強くなった雨の雫と共に、長生の顔を流れ始めた。それでも長生は何も言わずに、ただ上を向いていた。その姿を見て、少年はついに剣を収め、長生から離れ始めた。五歩、六歩…少年は長生が見えなくなる頃、勢い良く振り向くと、大きな声で叫んだ。

 「約束しろ。必ずお互い命を懸けて、闘おう。お前を殺すのは他の誰かではない。この俺だ!趙快慈だ。忘れるなよ。」

 「合い判った。必ず覚えておこうぞ!」

 長生はその声に応える時も上を向いていた。雨を避けるのも忘れ、上を向いていたのには、彼なりの理由があった。


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