「本当に出て行かれるんですか?」

 支度をする長生の背に向かい、公明は本当に残念そうに聞いた。昨日の雨は夜の間に上がり、嘘の様な日差しが、彼らが友情を育んだ狭い家に注がれていた。

 「うむ。仕方あるまい。お前達はこれからどうする?」

 長生は振り返って、公明と文遠に向かい、逆に問いかけた。

 「俺は…とりあえず北に向かおうと思う。何やら北にとんでもない怪物がいるらしい。呂布とかいう名前らしいんだけど、こいつに腕試ししてみるよ。」

 文遠はそう言って、笑った。しかしまだ顔は赤く腫れ上がり、少し笑っただけで顔が血だらけになっていた。昨日も沈む二人を元気付けようとして、無理に笑い話をし、自分の傷口を開いてしまった。やる事も考える事も文遠らしいな、と長生は彼の心意気の温かさを感じていた。

 「そうか、公明は?」

 深刻そうに落ち込む公明は、本当に寂しそうだった。


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