「俺達はずっと変わらぬ友だ。どこで、どういう立場で会おうとも…」

 その言葉の意味を公明も文遠も理解できた。二人は長生の出した手を両手で握り、堪え切れずに涙を流した。長生も涙が出そうになったが、いつもの癖で天を仰いだ。泣きたくなったら上を向こう。涙はこぼさない方が良い。彼はそう思っていた。昨日のあの事件を天は忘れさせてくれるかのように、晴れ渡っていた。見上げる長生の目に見たこともない長い雲が飛び込んできた。それは自分の涙で霞んではいたが、確かに厚く、存在感のある、どっしりとした雲だった。この時、彼は改名を決意した。

 

 

外伝:完


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