「何やってんだよ!お前の番だぞ。早く降りて来いよ!」

 その怒声は夕焼けが照らす平原に大きく響いた。高さおよそ五丈といった廃墟の屋根上に青年と少年が二人で立ちすくんでいた。怒声はどうやら彼らに向かって放たれたものらしく、出所は彼らの真下─廃墟の地上部分に座り込む四人の少年達からだった。年の頃は十歳程度、下の四人も上の少年も同じくらいの年に見える。一人浮いている感の否めない青年は隣で立ちすくむ少年と同じか、それよりもさらに青ざめて見える表情で、実際よりも遥かに遠く感じる地上に何重にも重ねられて敷かれた藁を、引きつった笑い顔で見つめていた。少年達の怒声は青年の隣で下を見ることも出来ずに固まっている少年ではなく、この青年に対してのものであった。

 「王の弱虫が飛べないのは分かってんだよ!お前が飛んだら帰るんだから早くしろよ!」

 下から声を突き上げる少年達の野次る言葉は容赦なく屋根上の二人に浴びせられた。時折少年への皮肉めいた言葉が付け加えられていたが、概ね青年の行動を促す言葉の連続だった。


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