「さて…どうします?諦めて泣いて謝りますか?それなら僕も付き合いますよ」

 青年はおどおどしく立ち上がると、下を向いたままそう呟いた。その言葉はもちろん今にも泣きそうな表情で目を細めて顔を真っ青にしている王と呼ばれた少年に向けられている。下の少年達に比べると幼く見えるのは、童顔の顔のせいだけではなく、華奢な体つきや色の白さも手伝ってのことだろう。青年はと言うと、その少年と同じく真っ白な肌をしていた。唇もその顔色のせいか、やけに赤く映えている。背丈は普通の大人と変わらないが、明らかに違うのは背中に背負った異様な剣の存在である。食客たちが持つこの国の剣は頑丈な程、乱戦に強いと考えられ、大人の掌大の大きさが当たり前で、中には厚さもその握り拳程、厚い物を得物にしている者もいた。しかし彼の剣は大人の指三本程度の幅しかなく、柄の部分から切っ先の細くなり始める部分まで、同じ幅が続いている見慣れない形をしていた。だが特に目を引くのはその細さでも切っ先の部分がやさしく弧を描いていることでもなく、その剣が遠目から見ても明らかに錆付いているという事である。どう見ても草でさえその剣では切れそうにない。


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