「もうあんな姿の趙さんはあまり見たくないの…できればあんな姿に…ほら、変身するっていうのかな?なって欲しくないの。普通のやさしそうな趙さんの方が…」
顔を真っ赤にしている蘭を見て、二人ともその行動や発言に何の意味があるのか、分からなかった。
「…僕からも一ついいですか?」
大事な話の途中で端折られた悔しさと恥ずかしさで蘭の顔は見る見る赤面していった。その事には理由は分からずとも気付いた趙神だったが、端折った手前、飲み戻す訳にも行かず。思い切って話してみた。
「料理の話ですが…できれば一日一食はどこかのお店に立ち寄るとか…僕に作らせるとか…そうですよ。私も一人旅が長かったせいで、結構腕には自信があるんですよ」
何気に趙神は肘で戒を突き、援護を求めた。
「そ・そうだよ…ほら何事も休息って必要じゃない。いつも蘭姉の料理じゃぁ…ングッ」
最後は趙神に口を塞がれ、声にならなかったが、戒の言葉と二人の態度で蘭の怒りは頂点に達した。二人は身の危険を感じ、同時に走り始めた。
「ゴルァ!待てゴルァ!!」
辺りは雲一つ無い真っ青な空だった。これから始まる長い様で短い物語の全貌を知る者は誰もいなかった。
序章:死神の呪縛
完