「…そうそう、私の背負っているこの剣ですが…」

 そう言うと彼は背中から、例の細身の剣を取り出し、二人の前に置いた。

 「名前を『不知火』。呪われた剣です。人は妖刀と呼びます。普段は草でさえ切れませんが、自分が選んだ主人が闘いを欲すれば青白く光り輝き、斬れぬ物はありません。また、九獣の神器と共鳴し、近くにあれば泣くと言います。私も実際に泣いたところを見たわけでは在りませんから、それがどういう意味なのかは分かりませんが…。これは私の心に死神を植えつけたある人物が、私に預けた物です。…これくらいでしょうか?」

 にわかには信じ難い説明の連続であったが、蘭も戒も実際に目の前でこの錆び付いた剣が生きた魔物の様に賊を次々と斬り倒していく姿を目撃しただけに、信じざるを得なかった。

 「分かった。それが趙さんの宿命なら、私達も旅の同行人として、出来る限りのお手伝いはするわ。ただ一つ趙さんにも約束してもらいたいの!」

 力強い声に戻った蘭は少し恥ずかしげに下を向きながら続けた。


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