均という少年は、戒よりまだ年少で、七歳くらいだと思われる。目鼻立ちのくっきりした可愛らしい顔をしていて、気さくに声を掛けてくれたのだが、彼の話では今は外出中の兄と二人で暮らしているのだと言う。父親はどこかで役人をしていたらしいのだが、最近病死した便りが届き、数日後には兄と荊州にいる叔父を頼って出て行くという事を説明してくれた。

 「ごめんね均君。君には本当に感謝してるんだ。でもこの町の人はどうしてこんなに閉鎖的なの?」

 均は何かを喋ろうとしたが、何故か思い留まり、話を摩り替えた。

 「洛陽から来たんでしょ?都はどんな感じなの?やっぱり人が多いのかな?本とかいっぱい読めるの?」

 蘭はやさしく均に洛陽の事を説明してあげた。無論、火の海になったこと以外ではあるが…。そんな時、玄関が開き、人が何やら歌を口ずさみながら帰ってきた。その歌の内容は強烈に世の中を否定し、来世を憂う内容のものであったため、三人は驚いた。しかし、姿を見せた歌い手は戒と同じくらいの歳に見える少年であった。


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