「曹東郡殿は、かなりの激情家だと聞いてます。今回、家族を斬殺されたことに対し、ここへ調査団という名目で暗殺軍団を派遣した…という話が伝わりました。何でも疑わしきは殺せ、という命令だとか…。町の人はその噂以降、知らない者に対し異常に警戒し、堅く門を閉ざすようになりました。まぁ自業自得なんでしょうけどね。それで先日旅の途中の夫婦が一組殺されたのは昨夜の話です。今夜、早速狙われるのではないでしょうか?」
亮以外の全員は既に夕食を食べる手を止めていた。彼の言う通り、今夜早速町の人間が行動をとるならば、ここで落ち着いて夕食を取っている暇はない。そう感じていた。
「腹が減っては戦も出来ませんし…さぁ皆さん遠慮なくお食べ下さい。」
亮は特に焦る事はない、とでも言わんばかりにそう三人に勧めた。蘭がようやく重い口を開いた。
「でもここで腹を満たす時間に逃げた方が良いんじゃぁ…?」
「あぁ!そういう事ですか?」
亮は今までその事に気がつかなかった様に驚いてそう言ってみせたが、
「でももう遅いですよ?」
そう言ってまた芋を食べ始めた。