「遅いって?何が?」

 蘭は恐る恐る亮に聞いてみた。もしや、この兄弟も自分達の命を狙っているのではないか?まさか、すでに食べたこの食事の中に毒が盛ってあったから、「遅い」などと言うのではないか?そんな胸騒ぎを覚えた。

 「この家は先程からかなりの人数に包囲されています。今から準備していたのでは間に合いませんし、玄関から出たらすぐに刺されちゃいますよ。」

 驚いて蘭と戒は立ち上がり、すぐに小窓の方へ近づき、警戒しながら外を見てみた。すると…月明かりに男達の影が見える。蘭達が覗く方向から見えるだけでも十人は下りそうにない。家全体を囲まれているのなら、数十人はいるのだろう。

 「趙さん、まずいよ。落ち着いてる場合じゃないよ。どうすんのさ?」

 戒はすがる様に趙神の反応を待った。趙神は先程からずっと亮の顔を本当に面白いものを見るような目で見ていた。戒に話しかけられても亮から目を離さずに答えた。

 「戒さん、心配ないですよ。彼を見て下さい。彼は僕らをかくまってますから、ある意味同罪です。ですがここまで落ち着いているのですから、恐らく既に次の手を打ってあるのでしょう。」


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