戒はそう言われて、なるほどという感じで亮を見てみた。そこで亮はようやく食べる手を止め、
「お兄さんこそ、この状況で驚く素振りを見せないのは、かなりの剣の腕があると見ましたが…」
そう言って趙神とお互い微笑みながら見合った。二人の間にはお互い探り合う様な奇妙な時間が流れていた。確かに十以上違う歳のはずなのに、それを感じさせない少年の眼力と計り知れない器の広さに、趙神は何故か喜びを感じていた。玄関の戸が叩かれたのはその時だった。
「諸葛君、ちょっと開けてくれないか?」
蘭は驚いて自分達の荷物をまとめ始めた。戒もそれに呼応するように蘭の手伝いを始めた。相変わらず趙神と亮は見合ったままであったが、均が兄を呼ぶ声で、ようやく二人は目を離した。