亮の言葉にすぐそう返した趙神は亮の背後を指して聞いた。そこにはいるはずのない町の人間が数人立っていた。手には剣やら槍やら、それぞれの得物を手にしていた。亮は一瞬驚いた様な顔を見せたが、大人達の後ろに隠れる様に立っている一人の少年の顔を見てまた今までの様な笑顔で話し始めた。

「いえ。さすがにこれは想定外でしたね。あの子に一度だけ見られた事がありました。いやぁ、失策でしたね。反省します。」

しかし亮の笑顔はそこまでだった。その後、趙神の顔を見て亮は全身に悪寒が走るのを覚えた。この状況をまるで喜ぶかの様な笑顔で、趙神は笑っていた。それはこれまでのやさしそうな青年の笑顔ではなかった。

「良く覚えておけ。裏切る者を生かしておけば、必ず後の禍いとなる。あの子供を見逃した時、その時がお前の失策だった。」


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