趙神は背中に凄まじい数の殺気を感じながら、それでも尚笑顔を崩すことなく、話した。
「ならばお前は、お前の美学を追及すれば良かろう。俺は現実だけを見て生きていく。ただそれだけだ。」
趙神はそう言って門を完全に閉めるべく力を込めた。もう外からは趙神の片目くらしか見えなくなったところで何かを思い出したように趙神はまた話し始めた。
「蘭さん…すいません…やはり約束は守れそうにないな…。自分の中の死神がまだ生きろって俺に言うから…」
話の途中だったが、門は完全に閉まった。最後の言葉は紛れもなく、あの優しい青年の発した言葉であった。蘭はその言葉を聞きながら涙を流した。門の外で彼らが聞いた言葉はそれが最後だった。それ以降に聞こえたのは、とても人間発したものとは思えない、まさに断末魔の叫びの連続であった。どれくらい続いただろうか?助けを求める声さえ全く聞こえなくなった時、もう日が明けようとしていた。