四
幼い兄弟は、互いに励ましあいながら、荊州への道を彼らなりの最高速度で確実に進んでいた。あれから三晩程経ったが、あれ以来、あの三人の話は亮も均もしていない。無論、あの時自分達が生まれ育った陽都の町がどうなったのかなど、話題に出すのもお互いに悪い気がして気を遣いあった。
ようやく南の荊州、東の許への分かれ道に差し掛かった頃、亮は東から来る何頭かの馬の姿を確認し、均の腕を引っ張り彼らのために道を明けた。近づいてきた馬は六頭。先頭を走る馬の主は幼い兄弟に近づくと馬を留め、他の者にも止まるように指示した。その頃には亮達は軽く腰を屈め、彼らが通り過ぎるのを待っていたのだが、馬が止まるのを感じると、そっと頭を上げ、正面で一際威厳を放つ大きな男を見上げた。
「少年よ。どこから歩いてきた?」
その男は身の丈も大きかったが、何より筋骨隆々な腕、胸、足の腿をしていた。見事に鍛え抜かれたその体を誇示するかの如く、上半身は裸で、腰には酒瓶が吊るされてある。そして、右の腰あたりには、見事な真紅の鞘に柄の部分がこれまた見事に青い立派な剣が用意されてある。