「はい。ここより数十里東、徐州は瑯邪郡より参りました。」

その亮の言葉に正面の男の後ろに馬を並べた彼らは顔を見合わせて狼狽した。亮にはその彼らの姿を見ただけで、彼らが何のために東へ向かっていたのか、予想がついた。

「そうか、瑯邪から来たか。お前達は幸運だ。俺達が行く前にそこを発ったのだからな。命は大事にしろよ。」

男は兄弟にそう言うと、後ろの者達に行くぞ、と伝え、自身も再び手綱を握った。しかし…。

「今から陽都に行かれても、人っ子一人居りませぬ。居るのは死神に呪われた町の人間の抜け殻だけでありましょう。」

亮のその言葉に男は反応し、走らせようとした馬を止めた。

「誰も居らぬ?死神だと?何の話だ?わしは曹東郡の将、夏侯元譲。少年よ、その話もっと詳しく教えてくれぬか?」

亮は悲しそうな目をしながら、事の顛末を話し始めた。あのような悲劇がもう起こらない様に祈りながら…。


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