─同時刻─

三人はさらに東へと歩いていた。

もちろんあの話題に触れることはなかったが、趙神に話しかけるのも何か気まずい雰囲気を隠せずにいた。その状態が三日も続けば、まず元々明るい蘭から打ち解け始めるのは、三人のお決まりであった。今回もやはり蘭の作る夕食が良いのか悪いのか、彼らの雰囲気を和ませた。そんな感じで、彼らはとりあえず東の州都、下ヒへと急いだ。

「あとどれくらいで着くのかな?」

戒はいい加減疲れたと言わんばかりに口を開いた。確かに陽都で休むには休んだものの、そこで就寝した訳ではないので、疲れが取れたとは言い辛かった。それは蘭も趙神も同じ気持ちであっただろう。

「この速さならば、明後日には着くだろうと思いますが…。」

趙神はそう言いながら、二人の手を引き、道端に引っ張り始めた。

「な・何よ?」

蘭も戒も彼の行動を怪しんだが、その意味はすぐに二人にも分かった。自分達が目指す、東の街道から、軍隊がこちらに向かってきた。かなりの速度で走っているのであろう、あっという間に軍は三人の前まで迫って来た。


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