そう言いながら彼は馬を降り、腰を低くして三人に話し始めた。蘭も自分達を知っている人に逢い、ホッとしたのか、突然涙を流し始め、事の顛末を一気に話し始めた。蘭は話すことに夢中で、気がついてない様子だったが、劉と名乗る男が馬を降りてから、軍の進軍が止まっていた事に戒と趙神は気が付き、この人物が見た目と違い、かなりの人物であることは彼らの持つ『劉』の旗を見ても分かった。

その時、彼らの第二陣が近づいてきた。戒はその中の先頭の人物に目を惹かれた。大きな体は彼の乗っている馬が小さいのかと勘違いする程で、赤ら顔に一際目立つ立派な髭はその堂々とした風格を増強させる役割を立派に担っていた。

「趙さん、何か凄い人が…」

戒は趙神に話しかけようと思ったが、彼の顔を見て驚き、言葉を止めた。彼はもう一人の彼に変身しつつあった。それは恐らく彼の本能がなす変化なのであろうが、戒は戦いの最中でしか彼の変化を見たことがなかったので、この状態で顔を出した死神に驚きを隠せなかった。趙神は不敵に笑っていた。赤ら顔の男から目を外さずに…。


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