「これは珍しい…招かれざる客人だな。」
「雲長、ご苦労。何だ?この青年とは知り合いか?それは良い、彼らを保護しようと思っている。」
劉備は赤ら顔の男に気さくに話しかけた。男の名は関羽雲長。七尺を超える背丈に下半身まで届く真っ黒な髭を蓄え、一目で武人だと分かる威厳を備えていた。
「長兄、こやつは呪われた男です。女子と子供は認めますが、この男に関わるのは止めておいた方がよいでしょう。私もこ奴に関わり、大変な思いをしました。」
いつの間にか晴れ渡っていた空に雨雲が出始め、東からは雷を含んだ黒い雲が目でもはっきりと分かる勢いでこちらに進んでいた。
「雲長?今はその名前か?お前は俺に勝つ唯一の好機を逃した男だからな。俺以外の男に倒されては困るぞ。あの約束も忘れてはおらぬだろうな?」
趙神は不敵な笑い顔を崩さず、馬から降りた関羽に向かって意味深な言葉を吐いた。
「まだ覚えておったか?もちろん忘れぬとも。まだその時期ではないが、必ずその約束を果たす時がこようぞ。」
関羽もそれに応える様に意味深に笑いかけた。趙神から目を離せなかった戒が彼の異変に気が付いたのはこの時だった。