「…ちょ、趙さん…、剣が…」
そう言われて趙神は始めて関羽から目を離し、背中の剣を鞘ごと目の前に掲げた。妖刀は柄の部分から微かに水蒸気の様な物が上がり、不気味に煙が立っている様にも見えた。趙神はゆっくりと鞘から剣を抜いた。不知火は早くも青白く発光し、先端から何故か水滴が落ちていた。その水滴に呼応するように、辺りはついに小雨が降り始めた。
「なるほど…こういう事か…。『神器現る時、妖刀妖しく涙す』雲長…だったか?お前、神器を手にしたのか?」
趙神はさらに妖しい笑顔を浮かべ、関羽を見ながらそう言った。関羽は並ぶ兵の一人に自らの得物を持ってくるように命じた。兵士が持ってきた大きな戟は通常の戟よりも長く、異様に太かった。また、刃の部分も一際太かった為、長い丸太の先端に大きな刀を括りつけた、そんな感じの武器であった。目を惹くのは柄の部分から刃の付け根まで、大きな一匹の龍が施されていたその模様である。
「ほう…その龍の刺繍…青龍堰月刀と見た。九種の神器の中でも最強と名高い代物、まさかお前が持っているとはな。」