趙神は不知火を両手に持ち直すと、今すぐにでも飛びかかろうかという構えを見せた。
「そういうお前の持つ剣が伝説の妖刀・不知火か?やはり我々の運命は避けては通れぬ様だな。」
関羽もそう吐くと、腰を深く落とし、左手を広げて前に出し、青龍堰月刀を背中で構えた。二人の尋常でない殺気を感じ取った周りの人間は徐々に後ずさりし、そこには二人以外の何者も入れない異様な空間が生まれた。
「そう言えば、あの日もこんな雨だったな。」
趙神はさらに妖しい笑顔を浮かべ、不知火の切っ先を地に着け、さらに腰を落とした。不知火から落ちる水滴はすぐにそこに小さな水溜りを作りそうであった。
「雲長!私の客人の前だぞ。控えよ!青年もどうかここでの戦いはお控え下され。」
その空間に足を踏み入れることの出来る唯一の人間が、そこに割って入った。関羽はその声を聞き、チラッと横目で劉備を見たが、すぐにまた趙神の方に目をやり、戦闘の構えを崩すことはなかった。先に構えを解いたのは意外にも趙神の方であった。趙神は劉備という人間にも興味を持った。不思議な魅力のある人間だと。誰をも入れないはずの自分と関羽の間にたった一言で割って入る人間はそういないだろうと。