「劉豫州殿、我々を保護してくれるという有難いお言葉に甘えさせて頂きたいと思います。しかし、私は行きたい所が在る故、ここでお別れしとうございます。どうか、この無力の二人をよろしくお願いします。」
趙神はまだ水滴を垂らす不知火をそのまま鞘にしまうと、深く頭を下げながらそう言った。さらに戦闘体制を崩さない関羽の方へまた向き直り、彼にも話し始めた。
「雲長、また一つ約束して欲しい。この子達を必ず守ってくれ。われわれ俺達の約束を果たすのはそれ以降でも遅くはあるまい。」
「…それは構わぬ。しかし、それまでにお前が必ず生きている可能性は?」
関羽は青龍堰月刀をまた他の兵に渡すと、逆に趙神に問うた。関羽から得物を預かった兵が必要以上に重そうに両手で抱えているのは、戒達には滑稽にも見えた。
「少なくともお前が生き残る可能性よりも高いはずだが?」
二人はまた笑い始めた。先程までの殺気は、お互い武器を収めた今でも、褪せる事無く辺りを漂っていた。