「隊長、曹東郡率いる本隊は明日にも我らに追いつきます。いかが報告いたしましょう?」

 「うむ。わしが直接事実を話す故、気にかけるな。徐州の軍ももうそこまで来ていよう。我らも陣を張る準備をしろ」

 夏侯惇はそう指示すると、また腰の酒瓶を取り出し、直接口に注いだ。と、もう一方の腰に下げた真っ赤な鞘に収められた剣を抜き、目の前に掲げてみせた。柄の部分は鞘の色とは好対照にこれ以上ないという青さをしていた。その剣に向かって夏侯惇は口に含んだ酒を勢い良く拭きかけた。

 「相棒…お前が欲しているのは何だ?その死神か?」

 至る所で死体に群がっている烏は異常な数に膨れ上がり、まるでこの国中の烏がここに集結している様にも思えた。その無数の烏達のけたたましい鳴き声が、夏侯惇には自分の問い掛けに対する自らの剣の返事の様な気がしていた。


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