声を発した男に向かって趙神はようやく目を開けて答えた。その際、風の様にすばやい仕草で趙神の上に乗った人物は後方へと飛退き、趙神を警戒するように間を開けた。彼らは上下が繋がったように思える真っ黒な衣装に身を包み、目だけは見えていたが、それ以外の顔、体は全てその黒で隠されていた。僅かに覗ける目の上は緑やら青やら言葉に表すのは難しいような色で装飾され、それが不気味さを増殖させる役割を担っているようだ。
「お頭より、お前を暗殺する命を受けたのはわしら二人じゃ。目的を達するまで、わしらが諦めぬ事はお主も良く知っておろう。」
馬鹿にする様に苦笑いする趙神を睨みつけながら、かなりの老人と思われる人物はそう話した。趙神は先程まで自分の上に乗っていた人物の方へ目をやりながら、ゆっくりと体を起こすと、そこに座り直し、さらに言葉を続けた。
「して、お前は誰だ?僅かに女子の匂いがした。まさか…紫音か?」