「うむ。董卓は長安に遷都した後、王允らと呂布によって暗殺された。その呂布らも董卓の残党らに追われ、敗走した。長安は洛陽以上に混乱し、献帝は何とか自力で長安を脱出した有様。その献帝を保護したのが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの曹操孟徳じゃ。曹操は許へ都を移すと、青州の黄巾賊を味方に付けた。強大な軍事力と頭脳を持って、今は父親殺害の仇を取るべく、徐州へ進軍を開始した。ここから先はお前も詳しかろう。」

 趙神は先日の瑯邪の出来事と今の話を重ね合わせ、ようやくこの国の現状が少しずつ見えてきた気がしていた。そして薄々気が付いていたが、彼らがかなり前から自分の行動を監視していた事も確信を持てた。

 「僅かな軍勢を守備に残した曹操に対し、陳留太守の張バクが突然反旗を翻した。奴と曹操は親しい間であったにも関わらず…裏で手を引いた人物がおるのじゃ。曹操はエン州で成り上がった男だが、まだまだ人心を掌握しているとは言い難く、この反乱に呼応して各郡が一斉に反曹操の兵を挙げた。そんな中、濮陽ではあの呂布を迎え入れ、今では反乱の盟主は呂布になっておる。この情報が入ったのは昨日の話じゃよ。」

 漢匠が一気に話し終わった頃、趙神はようやく空腹を満たし、漢匠の袋から今度は薬らしきものを取り出し、自分の傷口に何ら遠慮する事無く塗り始めた。漢匠もそれを止めようともせず、それどころか包帯代わりの布まで渡していた。


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