「聞いてない事まで喋ったって事は、何か言いたい事があるんだろ?」

 趙神は治療する手を一旦止め、今度はしっかりと漢匠の顔を見ながら、相変わらずの笑顔で答えた。対して漢匠はようやく黒い頭巾を頭から取ると、また話し始めた。

 「…呂布奉先。我々が今請け負っている仕事は奴の生け捕りじゃ。そこでお前と一時的ではあるが手を組みたい。」

 漢匠の顔は趙神が知っている頃と大した変わりもなかった。少しまた皺が増えた感じもしたが、彼の歳からすれば当然だろうし、彼の本当の年齢は知らないが、恐らく同じ年代の人間では無敵なのであろうと、昔から趙神は思っていた。

 「あの幽州の白馬将軍を殺したのは、袁紹に雇われたお前らなんだろ?ったく、味方がいようが、関係なくやってくれるな?んで、次は呂布?…しかし腑に落ちないな。お前らは俺を殺しに来たんだろ?その俺に手を組めと?」

 あの公孫伯珪に最後に手を下したのは、かなりの武の持ち主、恐らく紫音以外なら十六夜か剛力あたりか?そんな懐かしい人物の名前を思い出しながら、趙神はその場にいつの間にか紫音がいなくなっている事に気が付いた。


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