「陳公台ねぇ…聞いた事ないが、そいつが首謀者なのか?」

 二人が濮陽の鉅野という町に着いた頃、既に曹操軍は城を完全に包囲し、呂布はそこに立て篭もっていた。当然町には入れなかったが、とりあえず戦局を見つめる事にした。漢匠が放った諜報の話では、反乱の波はエン州全体を飲み込もうとしたが、曹操の本拠地であるケン城と范・東阿の二つの町だけは曹操の帰還を信じ固く守った。彼らはこれらを落とす事が出来ず、ついに曹操の大軍が帰還。形勢は完全に逆転し、反乱に呼応したエン州の各郡は次々に奪還されていったという。

 「ふむ。無名ではあるが、ここまでの曹操を支えてきた重臣である事には間違いないようじゃ。」

 「しかし、こうも周りを固められたら、戦にならないな。俺が出て行く前に呂布の奴、命を落とし兼ねないぞ。」

 二人は小高い丘から戦況を見つめていた。多くの旗と兵が鉅野の周りを蟻一匹通さないという勢いで配置され、激情家と聞く曹操の反逆者への怒りが見て取れる状況だった。

 「そうじゃな。そろそろ手を打たねばなるまい。今夜、わしが曹操軍の兵に成りすまし、酉の方角に風穴を開けよう。お主らは夜半にそこから密かに城内へ侵入し、奴を討て。」


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